抄録
香川県まんのう地域に分布する上部白亜系和泉層群北縁相の城山層上半部に,6層のカキ化石密集層を含む厚い汽水成層がある.その密集層の詳細な観察から,5タイプの産状型(リレー型,林立型,直立・横臥混在型,横臥密集型,横臥散在型)が識別できた.それらの分布や形状などから密集層の形成過程を復元すると,6層のうち5層は,(1)株状のカキ小集団の形成,(2)潮汐流などによる株の破壊と小移動,(3)それらを基盤とする密集層の大型化の3段階で形成された,自生・他生混在型カキ化石密集層であった.これは,物理的営力を受けやすい砂質潮汐低地に生息するカキ類における化石密集層の特徴と考えられる.さらに,本セクションに厚い汽水成層が存在し,そこに自生・他生混在型カキ化石密集層が含まれていることは,和泉堆積盆の沈降速度と供給量のバランスが長期間保たれたとともに,堆積盆沈降の停滞期が存在したことを示唆するものである.