日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
地域在住高齢者における主観的年齢と高次生活機能および新規要介護認定との関係―KAGUYAプロジェクト高齢者縦断調査より―
高取 克彦松本 大輔山崎 尚美宮崎 誠文 鐘聲
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電子付録

2023 年 60 巻 4 号 p. 373-381

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抄録

目的:地域在住高齢者における主観的年齢と高次生活機能および新規要介護状態の発生との関係を明らかにする.方法:2016年に奈良県A町の地域在住高齢者を対象に郵送式調査を行い,2019年に追跡調査が可能であった2,323名を分析対象とした.主観的年齢の評価は「気持ちの年齢についてお答えください」という問いに対して「年相応」「実際の年齢より若い」「実際の年齢より上である」の選択肢を設定した.その他の評価には,併存疾患数,高次生活機能(老研式活動能力指標およびJST版活動能力指標),抑うつ(Geriatric Depression Scale-5),自己効力感(General Self-efficacy Scale),運動定着(週1回以上の運動実施)などを聴取し,追跡調査時にはこれらに加え,対象者の新規要介護認定の発生状況についても調査した.データ解析は主観的年齢の分類によるベースライン時および追跡調査時の項目間比較および新規要介護状態の発生との関係を解析した.項目間の比較には一元配置分散分析およびχ二乗検定を行い,新規要介護認定への影響因子はFisherの正確検定および二項ロジスティック回帰分析を用いて解析した.結果:ベースライン時において「実際の年齢より上」と感じている者は高次生活機能,一般性自己効力感が有意に低く,他群に比較して週1回以上の運動を行っている者が少なかった.また「実際の年齢より上である」と感じている者は他群に比較して新規要介護発生が多く,反対に「実際の年齢より若い」と感じている者では少なかった.新規要介護認定を従属変数としたロジスティック回帰分析の結果では,他の因子を調整しても「実際の年齢より上」と感じることが独立したリスク因子であった(OR=3.33,95%CI:1.02~10.94,p=0.047).結論:地域在住一般高齢者において自覚的な年齢が暦年齢を超える者は,将来の高次生活機能を低下させ,要介護リスクを増加させる可能性がある.

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© 2023 一般社団法人 日本老年医学会
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