2014年2月の降雪による園芸施設への雪害の発生形態と発生原因について,関東甲信地方の三つの地域(埼玉県北部地域,山梨県峡東地域,長野県諏訪地域)を事例に,園芸施設の構造特性と気象の変化および地域的要因に着目して明らかにした.園芸施設被害の誘因である降雪・積雪・積雪重量は各地に過去最大規模の被害をもたらしたが,これらに応じて被害が一律に発生したとはいえなかった.被害状況を量的側面(棟数被害率)と質的側面(金額被害率)からとらえると,埼玉北部は量的側面よりも質的側面の被害が小さく,山梨峡東は量的側面よりも質的側面の被害が大きく,長野諏訪は量的側面と質的側面の被害がともに相対的に小さかった.耐雪強度の高い施設ほど被害が少なく,耐雪強度の低い施設ほど被害が多いともいえなかった.被害の差異を発生させた素因として,地域ごとの農業生産形態と農業者による事前対策や発生対処などの対応行動が影響した可能性を指摘できる.