抄録
本報告は東京の都市気候について主として地誌的観点から述べたものである。取り扱った気候要素は温度,降水量,湿度と日射量である。ただし, YOSHINO (1981), KAWAMURA (1985), YAMASHITA (1988) に部分的に東京の都市気候や大気汚染について発表されているので,ここでは主としてこれら3論文で扱われていない現象ないし観点から東京の都市気候を説明することを試みた。
気温は先ず観測開始以来からの経年変化を季節別に示した。次に東京のヒートアイランド強度を時刻別・季節別に示した。また,府中と越谷を東京の郊外地点の代表として選び,東京との気温差からヒートアイランド強度の頻度分布の日変化を求め,また,風向・風速による違いを示した。
降水量については,観測開始以来の年降水量の経年変化を求め,さらに降水日数の階級別頻度分布を示した。階級区分は, 0.0mm, 0.1-1.0mm, 1.1-9.9mm. 10.0mm以上である。また,31mm以上の対流性の雨の日数の都心と郊外の比較から,都市の影響が単純ではないことを示した。
湿度については近年急速に減少していることを示した。また,日射量については, 1972年以来の減少示数の季節別経年変化を示し,トータルでみた場合の都市大気質の変化は必ずしも改善されているわけではないことを明らかにした。