宝石学会(日本)講演会要旨
2026年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
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2026年度 宝石学会(日本) 一般講演要旨
レアストーン: アブデーバイトの鑑別
*趙 政皓, 北脇 裕士, 江森 健太郎, 藤田 直也, 岡野 誠, 福島 みのり
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p. 13

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抄録

アブデーバイトは、ミャンマーで発見されたNa に富むベリル族鉱物で、独立した鉱物種として 2018 年 IMA に承認された。理想的な化学式は NaAl4(Be5Li)(Si6O18)2(H2O)1-2 で表される。しかし、 2025 年ベリル超族の再定義に伴い、アブデーバイトは独立種としては削除された。現在、アブデーバイトの名称は Na に富む淡いピンク色のベリルの宝石名として使用されている。

アブデーバイトは近年発見されたレアストーンであるが、 2023 年末以降、 2025 年 6 月まで CGL には複数の顧客から合計 9 個のファセットカット石が鑑別依頼で持ち込まれている。そのほとんどは 2 ct 未満で、平均重量は 1.96ct、最大重量は 6.39 ct であった。本研究では、そのうち 1.56 ct のカット石の詳細を報告する。

当該石は屈折率 1.578-1.589、比重 2.71 で、公表されているアブデーバイトの値(屈折率1.59-1.60、比重 2.89)より低く、通常のベリルに近い値であった。

顕微鏡下では、淡色のマトリックス中に濃色の六角形部分が確認され、この組織はAgakhanov et al. (2021)が示したアブデーバイト-ベリルがエピタキシャル共生した試料と類似する。複数箇所で取得した FTIR 反射スペクトルは、 Lhuaamporn & Susawee (2025)が示したアブデーバイトおよびベリルの双方に対応する特徴と一致した。さらにラマン分光分析により、六角形部分がアブデーバイト、周囲のマトリックスがベリルであることが確認された。

しかし、アブデーバイトのラマンスペクトルはペツォッタイト (Cs(Be2Li)Al2(Si6O18))など他のベリル族鉱物と類似しており、注意深い解析が必要である。確定的な鑑別のためにはEDS 等による化学組成分析を併用することが望ましい。

以上より、アブデーバイトとして流通する宝石素材は単結晶ではなく、ベリルとエピタキシャル共生しており、単一箇所のスポット分析のみでは誤認の危険がある。確定的な鑑別を行うためには、顕微鏡観察に基づき複数箇所で FTIR およびラマン測定を行い、必要に応じて元素分析を併用ことが重要である。

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