抄録
これまでに, HAp粒子を付着させたグラファイト鋳型にTiを鋳造し(HAp Cast処理)表面にCaおよびPを存在させると, 純Tiに比較してハンクス液中でのHAp被膜の形成が促進され, 細胞増殖の活性化が認められるなどの結果を報告してきた. この表面処理によってTi表面に粒子状で付着したHAp粒子と, 溶着した部分が存在していた. 粒子状のHApは超音波洗浄などによりはずれてしまうことが多かったが, 溶着相はTi母相に付着していた. そこで今回は粒子の細かいHApを用い, 母相との付着力の高い溶着相を増加することを試みた. 一方, これまでの実験で溶着相の一部はCaOに変性していることがわかっている. 溶射によるHAp被覆においても, 高温でHApが変性するが, 水熱処理で再結晶化させることが可能であると報告されている. そこで, 試料の水熱処理を行いHApの再結晶を試みたので報告する. また, HApより生体活性の高いTCPを用いたCast処理も行い, HApとの比較も試みた.
この領域を元素分析したところCa19.9at%, P6.3at%で, これまでの∼40μmの大きなHAp粒子を用いた方法より高かった. この試料のX線回折像を図2a)に示した. 2θ=37.4°と32.2°のピークはCaOによるものである.
図2a)の試料を2時間水熱処理した場合のX線回折像をb)に示した. CaOのピークはかなり減少し, 代わりにHAp(210)と考えられるピークが現れた. この試料のSEM像を図1b)に示した. 柱状の結晶が表面に成長しており, 再結晶したHApと考えられる.