抄録
チイラン系モノマーは貴金属の表面に化学吸着して凝集分子構造を形成することにより, 極めて有効な貴金属接着性モノマーとなることが明らかにされている. これまで, 様々な種類のチイラン系モノマーが分子設計に基づいて合成され, 評価されてきた. 貴金属接着性モノマーの基本的な分子構造は, 大きく分けると, 被着体表面と相互作用して接着耐久性を発現させる接着官能性基, レジン中のモノマー成分と共重合することで共有結合を生成する重合性基, そして, これらの部分を連結しスペーサ的役割も果たす連結性基から成り立っている. 重合性基の二重結合としてメタクリル酸エステル系とスチレン系のものが導入され, さらに重合性基を2個有する二官能性のモノマーへと展開し, 接着官能性基であるチイラン部分には置換基のないエピスルフィド基やシクロヘキサン環構造を有する二環式構造のチイランが用いられ, 連結性基には主として長さの異なるアルキレン鎖が採用されてきた. これら様々なタイプのチイラン系モノマーは, その分子構造に応じて接着挙動が異なっていることから, 表面処理剤の処理方法もこれらのモノマーの接着性能に大きな影響を及ぼすと考えられる. 本研究においては, 従来からの標準的な表面処理法の「1mol%溶液塗布·1日放置·接着前の表面洗浄」から, 実用性を重視した「低濃度溶液塗布·10分間放置」の表面処理法に変更した場合の4種類のチイラン系モノマーの接着性能に及ぼす影響を比較·検討した.
このように, 貴金属接着性モノマーを構成する各部分の構造により, 表面処理法による影響の程度は大きく変化した. 基本的には, 被着体に吸着した分子の凝集構造の安定性に依存しており, 嵩高い構造は凝集構造の安定性を損なう因子となり得ると結論された.