2020 年 60 巻 5 号 p. 396-400
背景.小細胞肺癌は肝転移を来しやすいが,重篤な肝障害を呈するびまん性肝転移を呈することは少ない.重篤な肝障害を来す症例の予後は極めて不良で,化学療法を施行できる症例は稀である.症例.61歳男性.腹部膨満感を主訴に受診した.採血で著明な肝機能障害と,胸腹部造影CTで左肺下葉に結節と縦隔リンパ節腫大,びまん性結節を伴う肝腫大を指摘された.縦隔リンパ節の超音波気管支鏡ガイド下針生検を実施し,小細胞癌と診断された.シスプラチンとエトポシドの併用療法が奏効した.治療後のCTで肝臓は肝硬変様の形態変化を呈しており,他の原因の否定により,偽性肝硬変(Pseudocirrhosis)と判断した.肝硬変に伴う合併症に注意しながら,病勢進行まで化学療法を継続できた.結論.早期診断と化学療法は,肝転移による重度の肝障害を伴う小細胞肺癌の治療に有用である.