肺癌
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60 巻 , 5 号
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総説
  • 園田 大, 佐藤 之俊
    2020 年 60 巻 5 号 p. 373-378
    発行日: 2020/10/20
    公開日: 2020/11/02
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,呼吸器系腫瘍は分子標的治療薬や免疫療法の発達によって,その治療の選択の幅が大きく広がった.特に,手術不能例や術後再発例では治療方針の決定のために,組織型をはじめ,遺伝子変異の有無などを調べる必要がある.しかし,呼吸器系臓器は解剖学的特性上,検体採取が困難な例が少なくない.術前検査や手術適応のない症例では,十分な組織検体を採取することができず,検体が細胞診検体のみという場合もある.このため,良質の検体を確保することは重要な課題である.近年,ROSE(Rapid On-Site cytologic evaluation)などの検査方法や,セルブロックや液状化検体細胞診などの細胞保存技術の発達によって,呼吸器系の細胞診は飛躍的に向上した.現在,呼吸器系の細胞診は疾患の発見,診断のみならず,遺伝子異常の検索から次世代シークエンサーの使用まで,その利用範囲は大きく広がり,治療方針の決定にも有用な方法となっている.

総説
症例
  • 小川 操希, 立石 遥子, 鈴木 博貴, 冨田 勇樹, 宮﨑 幹規, 佐野 正明
    2020 年 60 巻 5 号 p. 385-389
    発行日: 2020/10/20
    公開日: 2020/11/02
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.ペムブロリズマブによる免疫関連有害事象で,急性視神経炎の報告は稀である.症例.71歳男性,術後再発の肺扁平上皮癌に対してペムブロリズマブ療法を行った.腫瘍縮小効果は得られていたが,9コース施行後に右視力の低下を自覚した.矯正視力低下,相対性求心性瞳孔反応欠損,限界フリッカー値の低下,視野狭窄,光干渉断層計において視神経乳頭腫脹を認め,急性視神経炎と診断された.2週間後には左眼にも同様の所見がみられた.ペムブロリズマブによる有害事象が疑われ,投与を中止した.急性視神経炎に対して副腎皮質ステロイドの局所投与を行い,限界フリッカー値の改善と矯正視力の若干の回復を認めた.まとめ.ペムブロリズマブによる視神経炎の報告は極めて稀である.視力の低下や視野障害,眼痛などがみられた際には,ペムブロリズマブの副作用も鑑別に挙げることが重要であり,早期に適切に治療し,失明を防ぐ必要がある.

  • 鈴木 悠斗, 中尾 心人, 荒川 総介, 藤田 浩平, 佐藤 英文, 村松 秀樹
    2020 年 60 巻 5 号 p. 390-395
    発行日: 2020/10/20
    公開日: 2020/11/02
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.抗PD-L1抗体であるアテゾリズマブの,肺大細胞神経内分泌癌(LCNEC)に対する有効性は十分に検討されていない.LCNECに対しアテゾリズマブを使用した3例を経験したため報告する.症例.症例1は65歳,男性.ふらつきを契機に受診し左肺S6結節と多発転移性脳腫瘍を認めた.脳腫瘍の外科的切除によりLCNECと診断(stage IVB).シスプラチン+イリノテカン奏効後にPDとなり,アテゾリズマブを開始し奏効を認めた.症例2は66歳,女性.左肺上葉結節を外科的に切除しLCNECと診断(stage IIB).術後化学療法としてシスプラチン+エトポシドを投与するも両肺多発転移と脳転移にて再発.アムルビシン,続いてシスプラチン+イリノテカンによる治療を行うもPDとなった.その後アテゾリズマブを開始し肺転移巣は縮小した.症例3は64歳,男性.左肺胸部異常陰影で受診し,気管支鏡検査でLCNECと診断(stage IIIA).放射線同時併用のカルボプラチン+エトポシド後にPDとなった.アテゾリズマブを投与し原発巣や肝転移の縮小を認めた.結論.LCNECに対するアテゾリズマブが奏効した貴重な症例と思われ,報告する.

  • 森本 健司, 森本 吉恵, 吉田 理愛, 伊達 紘二, 河野 秀彦, 髙山 浩一
    2020 年 60 巻 5 号 p. 396-400
    発行日: 2020/10/20
    公開日: 2020/11/02
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.小細胞肺癌は肝転移を来しやすいが,重篤な肝障害を呈するびまん性肝転移を呈することは少ない.重篤な肝障害を来す症例の予後は極めて不良で,化学療法を施行できる症例は稀である.症例.61歳男性.腹部膨満感を主訴に受診した.採血で著明な肝機能障害と,胸腹部造影CTで左肺下葉に結節と縦隔リンパ節腫大,びまん性結節を伴う肝腫大を指摘された.縦隔リンパ節の超音波気管支鏡ガイド下針生検を実施し,小細胞癌と診断された.シスプラチンとエトポシドの併用療法が奏効した.治療後のCTで肝臓は肝硬変様の形態変化を呈しており,他の原因の否定により,偽性肝硬変(Pseudocirrhosis)と判断した.肝硬変に伴う合併症に注意しながら,病勢進行まで化学療法を継続できた.結論.早期診断と化学療法は,肝転移による重度の肝障害を伴う小細胞肺癌の治療に有用である.

  • 鈴木 幹人, 加勢田 馨, 政井 恭兵, 朝倉 啓介, 菱田 智之, 林 雄一郎, 淺村 尚生
    2020 年 60 巻 5 号 p. 401-406
    発行日: 2020/10/20
    公開日: 2020/11/02
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.胸腺腫は低悪性度腫瘍であり,根治切除後の遠隔転移再発は稀である.症例.70歳代,女性.19年前に胸腺腫type B1,pT3(右肺浸潤)N0M0 Stage IIIに対し,胸腺全摘,心膜および右肺上葉部分合併切除,術後放射線療法(50 Gy/25 Fr)が施行され,経過観察中であった.術後13年目の胸部CTにて,右肺下葉に0.8 cm大の境界明瞭な結節陰影を認め,その後,同結節が緩徐ながら増大を示したため,初回手術より19年後に診断・治療目的に胸腔鏡併用下右肺下葉楔状切除を施行した.肺結節の病理所見は,初回切除検体と同様,異型に乏しいCD3,TdT陽性の未熟リンパ球を背景に,AE1/AE3,CK19陽性の腫大核を有する細胞を認め,胸腺腫(type B1)の肺転移と診断された.術後23ヶ月の段階で,再発を示唆する所見を認めず,外来にて経過観察中である.結論.緩徐な増大を示した胸腺腫孤立性肺転移の1例を経験した.胸腺腫がtype A~B1の場合は,晩期再発の可能性を念頭におくことが肝要と考えられた.

  • 渡辺 光, 金内 直樹
    2020 年 60 巻 5 号 p. 407-410
    発行日: 2020/10/20
    公開日: 2020/11/02
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.Morvan症候群は胸腺腫に合併する自己免疫疾患である.症例.50歳の男性.バセドウ病の定期通院中に前縦隔腫瘍を指摘され,胸腺胸腺腫摘出術+縦隔胸膜および心膜合併切除を施行した.病理診断では縦隔胸膜浸潤は認めたが,心膜浸潤は認めず,正岡分類II期,World Health Organization(WHO)分類ではtype B2胸腺腫と診断した.術後6か月に四肢の筋肉痛および痙攣が出現したため,各種検査を施行した.結果は抗VGKC(voltage-gated potassium channel)複合体抗体陽性,および筋電図で末梢神経の過剰興奮を認めた.また,せん妄や幻覚などの中枢系の興奮性異常を認めたため,Morvan症候群と診断した.治療はステロイドパルス治療,血漿交換療法施行後,経口ステロイドを開始した.治療は奏功し,術後1年6か月でMorvan症候群の症状再燃や胸腺腫の再発を認めていない.結論.本症例は胸腺腫術後にMorvan症候群を発症し,ステロイドパルスおよび血漿交換療法にて軽快した.Morvan症候群は非常に稀な疾患ではあるが,胸腺腫術後に発症する可能性があることを念頭に置いて診療を行う必要があると考えられた.

  • 加藤 康孝, 加藤 俊夫, 田中 博之, 梶川 茂久, 米澤 利幸, 山本 侑季, 都築 豊徳, 山口 悦郎, 久保 昭仁, 伊藤 理
    2020 年 60 巻 5 号 p. 411-415
    発行日: 2020/10/20
    公開日: 2020/11/02
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.Epidermal growth factor receptor(EGFR)uncommon mutationを呈する非小細胞肺癌に対するオシメルチニブの有効性は確立しておらず,80歳以上の高齢者に対する有効性や安全性は明らかでない.症例.84歳女性.健診で胸部異常影を指摘され,CTにて左上葉に腫瘤および広範に縦隔リンパ節腫大を認めた.全身検索で脳転移および多発骨転移を認めた(cT4N3M1c Stage IVB).CTガイド下肺生検で肺腺癌と診断され,遺伝子変異検索でEGFR L861Q変異が判明した.オシメルチニブを開始したが,食欲不振のため80 mg/日から40 mg/日に減量を要した.画像上部分奏効が得られたが,CEAが上昇した際に80 mg/日へ増量した.重篤な有害事象なく,現在も増悪なく投与継続中である.結論.高齢EGFR L861Q陽性腺癌患者に対してオシメルチニブを投与したところ奏効が得られ,継続投与が可能であった.

  • 栗木 未来, 横山 俊彦, 伊藤 雅文, 稲垣 雅康, 田中 麻里, 横山 佑衣子, 町井 春花, 高納 崇, 野村 史郎
    2020 年 60 巻 5 号 p. 416-422
    発行日: 2020/10/20
    公開日: 2020/11/02
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.良性転移性平滑筋腫(benign metastasizing leiomyoma:BML)は,組織学的に良性である子宮筋腫が遠隔転移をきたす稀な疾患である.症例.症例は44歳女性.35歳時に子宮筋腫核出術の既往がある.健診にて胸部異常陰影を指摘され,当院に紹介された.胸部CTで両肺に多発する辺縁の平滑な円形の小結節影を認め,1年の経過観察中に緩徐に増大した.胸腔鏡下肺生検を実施し,病理組織から子宮平滑筋由来のBMLと診断された.9年前に核出された子宮筋腫と同様の組織像であり,骨盤部MRIにて子宮粘膜下に筋腫の再発もみられた.6か月間のゴナドトロピン放出ホルモンアゴニストによる偽閉経療法にて子宮粘膜下病変,多発肺結節ともに縮小が得られたが,プロゲステロン製剤に変更後肺病変は再び増大した.結論.我々が1994~2016年に報告された26症例を検討したところ,約80%に子宮筋腫に対する手術の既往があり,術後BML発症までの期間は平均11.3年であった.子宮筋腫は既往歴として重要視されないこともあるが,特に手術歴がある症例には本疾患も鑑別に入れておく必要がある.

  • 山口 統彦, 宮本 愛子, 國屋 研斗, 東 浩志, 長 彰翁, 合屋 将, 楠 貴志, 西岡 清訓, 平山 喬, 酒井 俊輔
    2020 年 60 巻 5 号 p. 423-428
    発行日: 2020/10/20
    公開日: 2020/11/02
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による肺癌治療においては,従来の殺細胞性抗がん剤治療とは異質な副作用である免疫関連有害事象(irAE)が生じ致死的な副作用が出ることがある.血球貪食性リンパ組織球症(HLH)は,irAEとしては頻度が低いが重症化しうる重大な副作用である.症例.今回我々は術後再発の肺腺癌の二次化学療法において抗PD-L1抗体であるatezolizumabを投与した.初回投与9日目にHLHを発症し,各種治療に全く反応せず多臓器不全となり,初回投与からわずか17日目に死亡するという激烈な経過の症例を経験した.irAEがHLH発症に関与した可能性が高い経過であった.結論.ICI治療薬初回投与後数日間においても,致死的なHLHが生じる可能性があることを銘記すべきである.

  • 遠藤 駿, 三ツ村 隆弘, 石塚 聖洋, 本多 隆行, 榊原 里江, 池田 貞勝, 宮崎 泰成
    2020 年 60 巻 5 号 p. 429-433
    発行日: 2020/10/20
    公開日: 2020/11/02
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.次世代シークエンサーを用いた遺伝子パネル検査の登場により,がんゲノム診療が広まっている.今回,従来のEGFR遺伝子変異検査では変異陰性とされていたが,遺伝子パネル検査による再検索でuncommon mutationの存在が判明した症例を経験した.症例.70歳女性.肺腺癌pStage IIIA,左上葉切除後1年で肺内転移により再発した.手術検体を用いたPNA LNA PCR-Clamp法によるEGFR遺伝子変異検査では陰性と報告された.その後7年間にわたり,化学療法・免疫療法を行ったが,progressive diseaseとなった.遺伝子パネル検査(血液および組織)を実施し,EGFR G719DおよびE709Aが検出された.2018年11月からPNA LNA PCR-Clamp法の検索領域が拡大されたため,同法を再検したところ遺伝子パネル検査と同様の変異が検出され,アファチニブを開始し奏効を得た.結論.EGFR遺伝子変異検査の過渡期に変異陰性と診断された非小細胞肺癌症例の中には,治療効果が期待できるuncommon mutationをもつ症例が混在している可能性がある.

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