情景とは, 周囲にある環境や場面, あるいはシーン (scene) のことをいう。情景には多くのものや情報が存在し, それらは相互の関連性をもって, シーンに位置づけられている。
情景を把握するには, 感覚-知覚という生理学的レベルと, どのような情景であるかを認識するという対象認知レベルの過程がある。さらに, 認識した情景を他者と共有するには, 把握した内容を言語と結びつける言語処理レベルも関与する。また, 知覚した情景はそのまま解釈されるのではなく, 記憶や知識などとの統合によるアクティブな処理を経て, 情景が認識される。
本稿では, 情景を認識するまでの感覚-知覚-認知という一連の過程に関する基本的な事柄や神経学的基盤を解説した。そして, 認知症高齢者における情景知覚と高次の情報処理過程の先行研究に基づき, 若干の考察を示した。