記憶に支障が出る精神疾患としてPTSDと解離症を記憶障害の観点から考察した。記憶の問題は顕在記憶だけでなく潜在記憶にも関係し,状況によって動的に変動する性質を持つため,フォーマルな記憶検査では問題を検出しにくい。潜在記憶では,古典的条件付けと長距離のプライミングが問題になる。これらの現象があることを意識したうえでの診断と治療が有用である。解離性同一症の本質は,人格の分裂ではなく,記憶の分断である。そのため,治療の目的は人格の統合ではなく,記憶の共有であり,認知リハビリテーションの考え方を応用できる。