2017 年 2017 巻 27 号 p. 309-315
本稿の目的は,RDI(対人関係発達指導法)のコンサルテーションによる,自閉症スペクトラム児の母親に対する養育支援のあり方について,事例を通して検討することである.対象となったのは,小1の男児の母親で,約1年間に18回のコンサルテーションが行われた.分析の対象は,その際に提出された親子のやりとりの映像,35のビデオクリップに対する,母親の振り返り(リフレクション)とコンサルタントのコメントである.それぞれ前期と後期に分けて比較し,変容の特徴を抽 出した.
結果は次の通りである.リフレクションの内容は後期になると,否定的なものが減り,自分で意欲的に取り組もうとする内容が増えた.また,リフレクションの対象は前期後期とも “母親” 自身 が半分を占めたが,後期では “子ども” が減って “親子関係” に関するものが増えた.以上から,母親が映像を介したコンサルテーションを通して,自身の関わり方や子どもの見方に関する気づきが,親子の情緒的な相互交流につながったことが推測された.養育支援にあたっては,映像を活用することの重要性が示唆され,さらに安定した養育支援には,親と子,コンサルタントと親の関係システムを想定することの重要性が示唆された.