2020 年 2020 巻 30 号 p. 786-797
都内の公立学校の教員たちから「ここ数年で校内暴力は減ってきて,生徒指導は楽になってきた. 今,最も悩ましい生活指導上の課題はいじめ問題だ」という声をよく聞く.
文部科学省の「児童生徒の問題行動・不登校等の実態について」によれば,いじめの認知件数は近年増加の一途をたどっている.これは,軽微ないじめも見逃さないという学校体制が充実した結果であると捉えることができる.一方で,解消率に好転が見られないことが大きな課題である.
いじめに係る法令が整備されるとともに,様々ないじめ防止策が策定されているにもかかわらず,改善が見られないという現状を踏まえ,本稿では,いじめ問題の解決には,「別の角度からの対策が必要ではないか」「何か重大なことを見落としていないか」という観点から考察を進め,次の2点をいじめの未然防止に向けた「新たな視点」として提案する.
◎ 「子供たちのアイデアと主体性を生かした取組」の推進
◎ 教員を含む大人たちによる「いじめを助長しかねない不用意な言動」の防止