人文地理学会大会 研究発表要旨
2005年 人文地理学会大会 研究発表要旨
セッションID: P07
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京阪神大都市圏における近年の地価変動
*山田 浩久
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抄録
 本研究では,京阪神大都市圏における地価変動の特徴を,東京大都市圏のそれと比較から明らかにするとともに,近年の大都市圏域に見られる地価変動の一般的特徴を整理した。分析の結果は以下のように要約される。 _丸1_全域的な特徴:バブル期における地価の急騰によって,当初,京阪神大都市圏の地価分布は大阪市,京都市,神戸市の高地価が連たんする形状を示していたが,地価の下落によって,それぞれの都市を核とする地価勾配曲線が描かれるようになった。地価の下落は,東京大都市圏と同様に,1998年までは中心都市での地価下落を主体に進行し徐々に沈静化する方向にあったが,1999年以降,再び下落が進み,それは面的に進行した。 _丸2_阪神大震災による影響:1995年に生じた阪神淡路大震災を挟む1995_から_96年には地価の下落幅が大きくなった。東京大都市圏における分析結果においても同様な傾向が見られるため,この時期の地価下落は被災によって生じた土地生産性の低下に加えて,京阪神大都市圏の経済的活動の停止が国内経済へ負の影響をもたらしたことによるものと考えられる。 _丸3_人口の都心回帰:地価の下落に伴い,京阪神大都市圏の中心都市である大阪市,京都市,神戸市の都心人口はいずれも増加した。これは,地価の下落によって,用地の確保が容易になった中高層集合住宅が都心部に建設されるようになったためと考えられるが,郊外市町村の人口変動には大きな変化が見られない。都心部の人口増加が,周辺市町村からの流入人口の増加によるものか,都心部への流入人口が一定のもとでの流出人口の減少によるものなのかは不明瞭であり,この現象に対して「都心回帰」という言葉をあてることには疑問が残るところである。
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© 2005 人文地理学会
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