抄録
1.はじめに
本報告の目的は、京都府舞鶴市を事例として、年齢別居住分化に着目しながら、地方中小都市の居住地域構造を検討することにある。
2.舞鶴市の人口と年齢構成の変化
まず、舞鶴市の人口をみると、1960年から9万人代後半で安定している。また、その年齢構成の変化を確認すると、1960年では、10-14歳を頂点として、年齢階級が上がるほど人口割合が低くなっていた。しかし、2000年になると、年齢階級があがるほど人口割合が高くなり、65歳以上人口の割合が21.3%を占めるようになった。
3.旧行政区別の人口変化
舞鶴市内を旧行政区別に区分して、各地区の人口の変化を検討した。その結果、中心商店街の位置する旧舞鶴地区と新舞鶴地区で人口の減少幅が大きく、中心市街地の衰退状況が人口の面にも如実に現れていた。一方、市の中心部に隣接する地区では、人口密度は低いものの、人口が増加傾向にあった。このように、舞鶴市でも、中心部からその近隣地区へ人口が流出し、市街地の拡大が進展してきたが、その影響は、比較的近距離の範囲に収まっており、市の外縁部では、人口密度が低く、かつ人口の減少が継続していた。
4.年齢階級別の居住分化
年齢別の居住分化の進展の有無を検討すべく、専門化係数を利用して、各地区の年齢構成が舞鶴市全体の年齢構成とどれほど乖離しているのかを測定した。その結果、各地区における専門化係数の平均値は年々上昇してきており、各地区における年齢構成が舞鶴市全体の年齢構成から徐々に乖離し、年齢別の居住分化が進展してきたことが確認できた。そして、このように専門化係数が上昇してきた主たる要因は、都市外縁部における高齢化の進展によるものである。加えて、市街地近郊地区でも、ある特定の時期に専門化係数が上昇しており、宅地化の進展に伴い、住宅取得層の流入が見られたことが推察される。
次に、各地区の年齢構成を具体的に検討すると、地区別に以下のような特徴が見出された。まず、中心市街地である旧舞鶴では、主として加齢に伴う高齢人口割合の上昇が見られた。一方、新舞鶴でも高齢人口割合の上昇は見られるが、30歳前後の世代の流入が確認できる点で、旧舞鶴とは異なっていた。次に、市街地近郊地区を見ると、第1次ベビーブーマーが卓越する倉梯・与保呂・池内、第1次ベビーブーマーとそれより若干若い世代が卓越する余内・志楽・四所・高野、継続して30歳代が卓越する中筋、という違いが見られた。この差は、主として、宅地開発の時期の違いに伴う入居者層の差異に由来するものと考えられる。そして、市外縁部では、高齢化の進展が著しかった。最後に、舞鶴高専が立地する朝来と海上自衛隊の宿舎が立地する中舞鶴では、20歳以前後の世代が卓越していた。
5.おわりに
人口が停滞していた舞鶴市では、市街地近郊地区での宅地開発が進展して、人口の分散が進んできた。その際、主として宅地開発の時期の差に由来することが想定される形で、年齢別の居住分化が進展してきた。しかし、市街地近郊の各地区より舞鶴市全体の年齢構成との乖離が大きかったのは、高齢化の進展が著しい中心市街地の旧舞鶴と市外縁部の各地区であった。地方中小都市においては、中心市街地の衰退と都市外縁部における過疎化の進展が大きな問題であることがここにも現れている。