抄録
地球温暖化が樹木フェノロジーに及ぼす影響を推定するために、暖温帯に位置する静岡大学上阿多古フィールドにおいて、広葉樹29種の葉フェノロジーの観察を7〜10年間行い、開芽晩期到達目や平均落葉日の有効積算温量法による予測法について検討した。開芽晩期到達日については、有効積算温量法により直接推定するよりも、開芽初期到達日までを有効積算温量法を用いて推定したのち、それに展葉期間(推定値)を加算して推定する方が、その推定誤差が小さくなった。有効積算温量法を用いた平均落葉日の予測結果については、落葉樹15種中7種で、統計的に有意と判断された。以上の推定法を用いて、気温が一律1〜4℃上昇した場合に、フェノロジーが受ける影響について試算した結果、気温が1℃上昇する毎に、開芽初期到達日が平均3.4日早まり、落葉樹の平均落葉日が平均6.2日遅れ、落葉樹の光合成期間が、平均10日長くなると推定された。