保全生態学研究
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カメラトラップ法で明らかにされた大台ヶ原の哺乳類相とその特徴
福田 秀志高山 元井口 雅史柴田 叡弌
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2008 年 13 巻 2 号 p. 265-274

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抄録

カメラトラップ法を用いて、大台ヶ原各地域の哺乳類相の現状と、ニホンジカの生息場所の季節変化について調査した。東大台ヶ原(以下、東大台)に9地点、大台ヶ原南東部(以下、大台南東)に7地点、西大台ヶ原(以下、西大台)に3地点の合計19地点に、2002年の6月下旬から11月下旬と2003年の4月下旬から9月上旬まで自動撮影装置を設置した。その結果、ニホンザル、ムササビ、キツネ、タヌキ、テン、アナグマ、イノシシ、ニホンジカの4目8種と未同定のコウモリ類が撮影された。各調査地域のカメラ稼動延べ日数(総カメラ日)は、東大台で913日、大台南東で1,561日、西大台では729日だった。全体では、ニホンジカが圧倒的に多く2,837回(全哺乳類の出現回数の95.2%)を占め、次いでニホンザルの93回(3.1%)で、他の哺乳類は少なかった。とくに、東大台ではニホンジカが2,043回(99.0%)を占めた。一方、大台南東・西大台では、ニホンジカ以外の哺乳類がそれぞれ12.6%、16.3%と一定割合を占めた。ムササビは大台南東のみで、アナグマは西大台のみで撮影された。また、東大台やそこに近接する地点では、シカ以外の哺乳類が全く撮影されない地点も認められた。ニホンジカは、東大台では春季から夏季に増加し、秋季には減少する傾向が認められた。一方、大台南東、西大台では、東大台で撮影頻度が低下する秋季に増加する傾向が認められた。以上のことから、ミヤコザサ草原が広がる東大台では、ニホンジカが圧倒的に優占する単調な哺乳類相となっていると考えられた。また、大台南東や西大台では東大台に比べ哺乳類相は多様と考えられたが、その生息密度は高くないと考えられた。

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© 2008 一般社団法人 日本生態学会

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