保全生態学研究
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Print ISSN : 1342-4327
猪名川上流域における希少樹種エドヒガンの生育立地と個体群構造
石田 弘明浅見 佳世黒田 有寿茂青木 秀昌服部 保
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2009 年 14 巻 2 号 p. 143-152

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抄録

希少樹種エドヒガンの生態的特性と保全上の課題を明らかにするために、猪名川上流域におけるエドヒガンの生育立地と個体群構造を調査した(調査地の合計面積は約210ha)。本研究で調べた356個体のうち355個体(99.7%)は人為攪乱地(二次林、工事跡地、畑跡地)に分布していた。樹高1m未満の個体は総個体数の4.2%しかなく、樹高階・胸高直径階分布はともに一山型であった。また、他の樹木に被陰されている幹はほとんどみられなかった。さらに、エドヒガンは斜面下部に最も多くみられ、尾根部ではまったくみられなかった。これらの結果から、エドヒガンは「適湿性の陽地に好んで生育する攪乱依存種」であると考えられた。また、大半の分布地の地質が超丹波帯であったことから、猪名川上流域におけるエドヒガンの分布には人為的条件に加えて地質条件も関係していると考えられた。エドヒガンを保全するためには、更新サイトの創出や被害を与えているつる植物の伐採などの対策を講じる必要があることを指摘した。

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© 2009 一般社団法人 日本生態学会

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