2010 年 15 巻 2 号 p. 163-171
福岡県津屋崎沿岸域において絶滅危惧種カブトガニの産卵場所と来浜ペア数の年変動を調べた。2004年から2008年までの野外調査によって、津屋崎沿岸の12カ所でカブトガニの産卵を確認した。産卵地点の底質は泥分含有量が0%〜6.1%で、中央粒径値と淘汰度がそれぞれ-2.32φ〜2.32φと0.37φ〜1.98φの範囲であった。各産卵地点の繁殖ペア数と中央粒径値との間には有意な正の相関関係がみられ、特に津屋崎橋周辺の4地点(細砂および中砂の地点)に約7割の繁殖ペアが集中することが明らかとなった。さらに、継続的なモニタリング調査によって、津屋崎沿岸域に来浜する繁殖ペア数が毎年減少していることが示された。津屋崎沿岸のカブトガニの減少要因としては、近年の沿岸開発の影響が考えられる。今後も地域住民とともに本種のモニタリング調査を継続し、地域社会の理解を得ながら多様な生きものが共存する沿岸生態系の保全に取り組むことが望まれる。