保全生態学研究
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Print ISSN : 1342-4327
外来哺乳類の捕獲努力配分手法と効果比較
佐々木 茂樹松田 裕之
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2010 年 15 巻 2 号 p. 173-181

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抄録

罠により侵略的外来哺乳類の防除を行う場合、捕獲努力量(罠数と設置日数の積)の空間的配分は根絶達成時期や防除の効果に影響する。対象生物が分布拡大の途上である場合、効果的な捕獲地域の設定や捕獲努力の配分には、対象生物の分布に基づいた防除計画の立案が有効である。しかし、生態系管理者が対象種の分布について十分な情報を持っていることは少ない。また、広い範囲で防除を行う場合、捕獲努力量の配分を柔軟に変えることは難しい。そこで、本研究では個体数密度と捕獲努力量の空間分布を記述する格子モデルを用いて、前年の捕獲結果から捕獲努力量の配分を適切に決定する手法を、奄美大島おけるジャワマングースHerpestes javanicusを例に検討した。その結果、捕獲効率の密度依存性が低い場合、前年に捕獲実績のあった場所となかった場所の捕獲努力量を2:1程度とすると早期の根絶が達成された。捕獲効率の密度依存性が高い場合には、捕り残し個体数と分布拡大速度にはトレードオフが生じた。前年に捕獲されなかったが、近隣で捕獲実績のあった地域の捕獲努力を増やすと分布拡大を遅らせることができた。一方、捕り残し個体数を減らすためには、捕獲実績があった地域と、近隣で捕獲実績があった地域に同程度の捕獲努力を配分することが有効となった。

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© 2010 一般社団法人 日本生態学会

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https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja
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