抄録
伝統的な管理で維持されてきた里地里山の景観は草地、水辺、樹林などから構成され、生物多様性、バイオマスエネルギー生産、地域の伝統文化、などの点で注目されている。しかし100kmを超える空間スケールの広い地域の中で里地里山の多様性がどのように分布しているのかは、調査手法が開発されていないこともあり不明であった。この研究では、長さ10kmの長距離ライントランセクト法を用いて100kmを超える大きな空間スケールで関東地方全域における里地里山の生物多様性の分布パターンを実地調査で調べた。その結果、里地里山植物の豊かな地域は関東周辺では北東部(茨城県北部と栃木県東部)であることが示された。ただし草地の指標種は寒冷山地で豊かであり、水田の指標種は温暖な低地で豊かであったため、里地里山の生物を保全するためには両者が同時に出現する地域を保全するだけでなく、両要素がそれぞれ豊かな地域も重要であることが示唆された。