保全生態学研究
Online ISSN : 2424-1431
Print ISSN : 1342-4327
特集 東日本大震災と砂浜海岸エコトーン植生:津波による攪乱とその後の回復
巨大津波直後の海岸林に生じた多様な立地の植生の変化 : 3年間の記録(保全情報,<特集>東日本大震災と砂浜海岸エコトーン植生 : 津波による攪乱とその後の回復)
菅野 洋平吹 喜彦杉山 多喜子富田 瑞樹原 慶太郎
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2014 年 19 巻 2 号 p. 201-220

詳細
抄録

東北地方太平洋沖地震(2011年3月11日)によって発生した津波によって、仙台湾岸の海岸林は大きく破壊・攪乱された。我々は、津波攪乱後の植生の変化を捉えるために、津波後も高木層が残存した林分(残存林)、津波によって樹木がなぎ倒された林分(倒壊林)、表層が攪乱され裸地状態となった場所(表層露出地)及びヨシが優占する湿地(湿性地)といった多様な立地環境(小規模ハビタット)において、2011年から2013年にかけて植生調査を行った。その結果、高木層の残存、倒壊にかかわらず、林床にはマルバアカザやコマツヨイグサ、ヨウシュヤマゴボウの出現頻度が高かった。これは、津波によって運び込まれ堆積した砂の中の埋土種子からの出現であると考えられる。しかし震災後3年目では、これらの先駆的な種は減少し、代わってヒメムカシヨモギやオオアレチノギク、セイタカアワダチソウなどの越年生・多年生草本が優勢になった。また、残存林や倒壊林ではヒメヤブランやスイカズラなど、津波以前から生育していた森林性植物の被度が増加した。さらに、表層露出地においてはクロマツやアカマツ、カスミザクラなどの高木性樹種の実生が出現してきており、津波後の海岸林植生の自律的な回復が示唆された。一方でハリエンジュやイタチハギなどの外来植物が萌芽によって地上部を再生しており、在来種の植生回復を阻害する可能性も示唆された。

著者関連情報
© 2014 一般社団法人 日本生態学会

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top