保全生態学研究
Online ISSN : 2424-1431
Print ISSN : 1342-4327
特集 東日本大震災と砂浜海岸エコトーン植生:津波による攪乱とその後の回復
2011年大津波を受けた仙台湾南蒲生の海浜植物の再生状況(<特集>東日本大震災と砂浜海岸エコトーン植生 : 津波による攪乱とその後の回復)
岡 浩平平吹 喜彦
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2014 年 19 巻 2 号 p. 189-199

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抄録

本研究は、仙台湾南蒲生の海浜から海岸林のエコトーンを対象にして、2011年大津波後の海浜植物の再生と微地形の関係性を調べた。調査は、津波から約2年4ヶ月後に、海浜に3本、海岸林に1本の調査測線を設置して行った。調査の結果、海浜植物の種構成は海岸林と海浜でほぼ共通していたが、生育密度は海浜よりも海岸林で顕著に高かった。海岸林では、津波時に地盤が堆積傾向であったことから、海浜から埋土種子や地下茎が供給されたため、海浜植物の再生が早かったと考えられた。また、海岸林では、比高の低い立地を除いて、外来草本もしくは木本が優占していた。そのため、将来的には、侵入した海浜植物は徐々に衰退し、樹林へと植生遷移することが予想された。一方、海浜では、海浜植物が全体を低被度で優占していたが、津波による洗掘で形成された深さ2m幅20m程度の凹地だけは、海浜植物の種数と被度が高かった。凹地では防潮堤が建設される予定であるため、種の多様性の高い立地が消失することがわかった。以上のことから、対象地では、安定した海浜植物の生育地は十分に確保されておらず、海浜植物の保全のためには多様な微地形の維持・創出が重要であると考えられた。

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© 2014 一般社団法人 日本生態学会

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