抄録
スジシマドジョウ種群の繁殖期と繁殖場所を明らかにすることを目的に、琵琶湖北西部の沿岸域に位置するビオトープ池「水すまし水田」と湖岸の水生植物帯、および農業用水路において、2011年と2012年、2014年に調査を行った。「水すまし水田」では4〜7月に標準体長42〜107mmの成魚の侵入が見られた。成魚が最も多く侵入したのは、各調査年度で最大の降雨があった日の当日、もしくは翌日であった。6〜7月には幼魚も採捕された。水生植物帯と農業用水路では主に4〜6月に成魚が採捕されたが、幼魚は採捕されなかった。以上のことから、「水すまし水田」では、成魚の体サイズ分布に基づきビワコガタスジシマドジョウとオオガタスジシマドジョウの2種が産卵を行っていると推察された。また、スジシマドジョウ種群の繁殖行動はまとまった降雨によって誘発されると考えられる。本調査地では主に「水すまし水田」(湿地状の一時的水域)で繁殖しており、水生植物帯と農業用水路ではあまり繁殖していないことが示唆された。