抄録
山形県鳥海山麓のスギ人工林において、イヌワシの採餌環境の改善を目的とした列状間伐が4つの異なる伐採幅(5 m、7 m、10 mおよび15 m)で行われた。本研究では、伐採幅の違いがノウサギの利用頻度に与える影響を明らかにし、さらに、間伐後3年目の秋に行った再刈り払いがノウサギの利用頻度に与える影響を検証した。ノウサギの利用頻度は、自動撮影装置で得られた各伐採列のRAI(30日あたりのノウサギ撮影総数)と木本類の食痕断面積合計(調査面積あたりの食痕量)によって評価した。RAIと食痕量は間伐後1年目には広い伐採幅(15 m幅)で、間伐後2年目以降は狭い伐採幅(5 m幅と7 m幅)で多かった。再刈り払い後は非刈り払い区より再刈り払い区で、特に狭い伐採幅でRAIと食痕量が多かった。このことから、再刈り払いによってノウサギを誘引でき、その効果は狭い伐採幅で顕著に現れることが明らかとなった。また、狭い幅で列状間伐を行うことは、長期的な森林の利用や管理の視点を考慮した間伐方法としても効果的であると推察された。