2017 年 22 巻 1 号 p. 55-61
保全生物学の分野では長年に渡り、科学と実務の間のギャップの解消が課題になっていた。本稿では、国際および国内の両レベルにおけるギャップの現状を紹介する。国際的には、生物多様性条約の愛知目標の裏付け(根拠)やその進捗を計測するために科学的証拠・知見の必要性が課題とされている。国内においては、不足している科学的知見が明らかにされている場合もあるし、政策立案過程において様々な科学的疑問・課題が急な形で出てくる場合もある。本稿では、こうしたギャップに対応した研究の進展に寄与するため、行政が活用しやすい科学的情報の内容や提示の仕方や、研究者がそうした行政ニーズを知る方法についても意見を述べる。