抄録
風力発電は、環境負荷が少なく比較的低コストに利用可能なエネルギー源として世界各国で導入が進められている一方、衝突死に代表される鳥類への影響が懸念されている。鳥類や生態系保全の観点から、衝突するリスクが高い場所への風車建設を避けることが重要となる。建設前の環境影響評価において、鳥類衝突リスクモデルを用いた推定衝突数により鳥類への影響を評価する方法が日本国内外で一般的となっているが、様々な課題が表出している。これまで広く利用されてきた衝突リスクモデルでは、評価対象とする風力発電所全体で一つの推定衝突数を求めるが、実際の衝突数は1つ1つの風車が立地する地形、風況等によって大きく異なる可能性がある。衝突リスクモデルの変数である回避率は、モデルの計算結果に影響の大きいパラメータであるが、回避率が得られている種は極めて少ない。現状の衝突リスクモデルのみによる鳥類への影響評価では、個体群に及ぼす影響について評価できない。衝突リスクモデルによる環境影響評価は単一の発電所を対象に行われているが、特に複数の風力発電所が集中して立地する場合には、希少種の個体群に対する累積的な影響を評価する取り組みが求められている。日本国内の風力発電所で実施されている事後モニタリングを工夫すれば、種や立地環境によって異なる衝突数、回避率、さらに個体群の影響評価に活用できるデータを得られる可能性がある。