2018 年 23 巻 1 号 p. 9-17
外来種による生態系への影響として、類似した生態的地位を占める在来種との競争が挙げられる。従来、哺乳類における競争関係の評価は、同所的に生息する外来種と在来種の間で、食性や行動圏内の土地利用を比較することで行われることが多かった。しかし、種間関係は本来、広域スケールでの個体群密度の関係性を、共通する資源量を共変量として評価する必要がある。本研究では、千葉県南東部において在来種タヌキNyctereutes procyonoides に外来種アライグマProcyon lotor とハクビシンPaguma larvata が負の影響を与えているかどうか検証することを目的として、3種の分布解析を行った。各種の局所個体群の密度指標は、行政担当者と猟友会会員に対して行ったワナ位置の聞き取りと、行政の捕獲数データを用いて算出した。また共通の資源としては、土地利用要素(果樹園・水田・畑・放棄田・市街地・森林面積・林縁長・水涯線長)を変数とした。階層ベイズモデルを用いた回帰分析の結果、タヌキ は外来種アライグマから負の効果、外来種ハクビシンからは正の効果を受けていることが推察された。タヌキは農作物被害を引き起こす有害鳥獣として日本全国で年間2 万頭駆除されている。今後、外来種アライグマの分布拡大に伴い、タヌキの個体数が減少する恐れがあるため、タヌキの生息密度モニタリングや、種別に農作物被害に見合った駆除数を設定する必要がある。