抄録
外来生物の管理を効率的に行うために、管理計画を地図化することは有効である。しかし、地図を作成する際に、対象とする空間的な広がりと、扱う空間解像度が持つ意味を考え、スケールごとに明確な目標を設定しなければ、有効な計画にならない可能性がある。本研究は、大分県玖珠郡九重町におけるオオハンゴンソウ(Rudbeckia laciniata L.)を対象に、現地における駆除管理活動に貢献することを目指し、広域スケールでは基本方針の立案を、詳細スケールでは駆除活動を行う地点の優先付けを行い、これらを一貫して提示するというマルチスケールの管理計画を提案した。具体的には、1)対象地の分布域全域を5 kmメッシュに区切り、駆除を推奨する地域、抑制を推奨する地域、監視する地域という3つのカテゴリにゾーニングした「管理方針地図」(:広域スケールの基本方針)と、2)駆除を推奨するひとつの5 kmメッシュにおいて、生育地点を単位に、駆除の優先付けをするための数値指標を複数付与し、現場で判断する材料を提示した「作業計画地図」(:詳細スケールの優先付け)の両方を作成し、これらをまとめて計画から実践までを一連できる「管理計画地図」とした。管理計画地図を行政等の計画立案者、ボランティアや事業者等の実務者に適切に提供することで、効率的な駆除の推進への貢献が期待できる。