2019 年 24 巻 2 号 論文ID: 1803
熱帯性海草ウミショウブ Enhalus acoroidesの北限分布域における有性繁殖の季節性を明らかにすることを目的とした。八重山諸島の西表島において 2013年から 2017年まで開花時期を観察した。 2014年と 2015年には、 4×4 m調査区を 3ヵ所ずつ設置して、開花から種子放出までの経過を記録した。開花は、 1年で比較的水温が高く、日照時間が長く、日中の干潮位が低い 5月から 11月までにみられた。開花は日中の干潮位がより低い大潮周期に同調したが、 10月以降ではその潮位は高く、受粉成功に至らなかった。シュートの年開花数は 1回であった。開花から果実裂開までの期間は、平均 84±6.5日であった。雌の開花シュートのうち、開花 3日後に花が残存した割合は 51.2%であり、その後 60日まで生残した割合は 9.8%、最終的に果実の裂開に至った割合は 9.3%であった。ほぼ周年にわたり開花・結実する熱帯域と比較して、開花期は短く、果実成熟にいたる有効な開花は開花期の前半に限られた。この結果、本海域における有性繁殖による生産性はより低いことが示唆された。