保全生態学研究
Online ISSN : 2424-1431
Print ISSN : 1342-4327
調査報告
立山連峰弥陀ヶ原におけるミヤマモンキチョウの生息地の選好性
清水 大輔山崎 裕治
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2021 年 26 巻 2 号 論文ID: 2029

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抄録

ミヤマモンキチョウは、高山帯から亜高山帯にかけて生息する高山蝶である。本種は、近年の温暖化によって、個体数の減少が危惧されており、 2019年の環境省レッドリストでは準絶滅危惧種に指定されている。しかし、現在本種の生息域や生活環などの基本的な生態研究が十分に行われていない。本調査では、ミヤマモンキチョウの保全を目的とし、本種の主要な生息地である立山連峰弥陀ヶ原の標高約 1600 mから約 2100 mまでの範囲において、生息状況および利用環境に関する調査を行った。その結果、 2019年 7月 17日から同年 8月 18日までの間に、本種の成虫が延べ 529個体確認された。本種の確認地点は、標高 1700 m以上の草原地帯であり、森林地帯では確認されなかった。また、草原において本種の出現に与える影響を推測するために、本種の出現を目的変数とし、草原全体のメッシュの斜度と草原における地形の存在メッシュを説明変数としたロジスティック回帰分析を実施した。その結果、本種の出現に対してメッシュの斜度は正の影響を示し、池塘の存在は負の影響を示した。これは、本種の成虫が池塘周辺と比較して、傾斜が大きく水はけのよい草原地帯を多く利用する傾向があることを示唆する。また、本種が利用する吸蜜植物および寄主植物の種類や樹高、および日照状態などの生育環境を調査した。本調査の結果は、将来的な環境変化が本種のさらなる減少をもたらす可能性があることを示唆する。

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