2003 年 8 巻 1 号 p. 43-49
小規模の湧水湿地が散在する丘陵地域に生育するミミカキグサ(Utricularia bifida)とホザキノミミカキグサ(U. racemosa)の地域個体群を調査した.どちらの種においても,生育可能な湿地の密度が高い場合に湿地へのミミカキグサ類の出現頻度が高く,この地域のミミカキグサ類はメタ個体群であることが示唆された.ホザキノミミカキグサがメタ個体群を維持できる限界の湿地密度は半径500m内に3.4個程度であり,ミミカキグサの限界湿地密度は半径100m内に3.1個程度であった.この地域のミミカキグサ類を保全するには,個々の湿地の保全だけではなく,地域の湧水湿地群全体を維持する必要のあることが明らかになった.