論文ID: 1822
生物の種や群集の分布情報の把握やモニタリングは、環境科学や自然資源の管理の研究を行う上で最も重要な課題であり、これらの遂行のためには正しい種同定の技術が欠かせない。しかし、種同定の作業には大きな労力がかかる。画像に基づく生物種の自動同定は種同定や種の分布のマッピングの労力を削減するうえで有望な技術になるかもしれない。本稿では、近年画像認識や分類の分野で画期的な成果をあげている深層学習(deep learning)の技術に焦点を当てる。まず、深層学習の主要なアルゴリズムであるニューラルネットワークおよび、畳み込みニューラルネットワークの技術的な背景について簡単に説明を行う。次に、深層学習の技術の適用事例として、植物の種識別およびリモートセンシングでの植生マッピングの研究事例を紹介し、今後の展望を述べる。深層学習の実用化により、画像分類や物体検知などの精度が飛躍的な向上を見せつつある。今後、生態学にかかわる様々な画像データを体系的に整理することで、これまで大きな労力を要してきた生物多様性や植生のマッピング・モニタリングを従来よりもはるかに低労力でかつ高い時間解像度で行うことが可能になることが期待される。