保全生態学研究
Online ISSN : 2424-1431
Print ISSN : 1342-4327

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千葉県における洞穴性コウモリ類の生息洞穴の分布と保全のための評価の試み
中村 光一朗 安井 さち子上條 隆志吉倉 智子宮野 晃寿繁田 真由美
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論文ID: 2331

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抄録

要旨:コウモリ類の保全には、その生息洞穴の保全が重要である。本研究では、千葉県の洞穴性コウモリ類の基礎的情報を得ることを目的とし、コウモリ類の生息洞穴の分布を明らかにするとともに、保全上優先すべき洞穴の評価を試みた。コウモリ類の現地調査は、千葉県内の119ヶ所の洞穴で行った。保全上優先すべき洞穴の評価については、コウモリの生息状況から評価するCave Biotic Potential(BP)を用い、相対的な個体数などから最も保全上重要と判定されるLevel 1から最も低いと判断されるLevel 4の4段階で評価した。評価はコウモリの出産哺育等の時期を考慮し4期間に分けて行った。現地調査の結果、70ヶ所の洞穴において、ニホンキクガシラコウモリRhinolophus nippon、コキクガシラコウモリRhinolophus cornutus、モモジロコウモリMyotis macrodactylus、ユビナガコウモリMiniopterus fuliginosusの4種の生息が確認された。ユビナガコウモリについては、初めて県内で出産哺育洞穴が確認された。この出産哺育洞穴では、16,331頭のユビナガコウモリが確認されたことから、千葉県における本種の個体群維持上重要な洞穴と考えられた。春から冬の4期中、少なくとも1期以上についてBPによる評価がLevel 1となった洞穴は15ヶ所と全体の12.6%であった。本研究の結果は、千葉県においてコウモリ類が生息する洞穴ついてその保全対策の優先順位を決める上で有効な情報になると考えられた。一方、ニホンキクガシラコウモリの出産哺育が確認された10ヶ所の洞穴のうち、Level 1とLevel 2となった洞穴はそれぞれ1ヶ所のみであった。本研究でのBPは、確認個体数が大きな影響を及ぼす値であり、ニホンキクガシラコウモリのような少数で出産哺育集団を形成する種に対して、出産哺育洞穴の重要性が過小評価される可能性がある。

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