ヘルスプロモーション理学療法研究
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抑うつ傾向にある高齢者の歩行の特徴
村田 伸矢田 幸博岡村 祐一張 淑珍津田 彰
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2017 年 7 巻 3 号 p. 127-131

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抄録

抑うつ状態にある高齢者の転倒発生率は高く,抑うつ状態が転倒の危険因子であることが報告されている。本研究は,シート型歩行分析装置を用いて,抑うつ傾向にある高齢者の歩容の特徴を明らかにすることを目的に実施した。5-item Geriatric Depression Scale で2点以上に該当した抑うつ傾向群17名と該当しなかった非抑うつ群68名の歩容を比較した結果,抑うつ傾向群は非抑うつ群と比べて歩行速度が有意に遅く,ストライドや歩幅が有意に狭かった。また立脚時間と両脚支持時間は有意に長かった。一方,歩行率,歩隔,足角,歩行角,遊脚時間,重心動揺には有意差は認められなかった。今回の結果から,抑うつ傾向にある高齢者の歩容の特徴として,歩行速度の低下に関与するストライドや歩幅の減少と立脚時間や両脚支持時間の延長が認められたが,立位バランスの有意な低下は認められず,転倒しやすい高齢者の特徴である不安定なバランスを補完するための歩隔や歩行角の増大は認められなかった。よって,抑うつ傾向にある高齢者が転倒しやすい理由は,立位バランスの低下よりも注意力の低下や不活動による体力低下の影響によるものと推察された。

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© 2017 日本ヘルスプロモーション理学療法学会
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