2016 年 24 巻 p. 40-44
リン脂質は,その生体安全性から医薬品や化粧品の添加剤として広く利用されており,特に閉鎖小胞体であるリポソームは代表的DDS(Drug Delivery System)担体である.しかしながら,非平衡構造体であるリポソームの工業的な製造や品質管理は決して容易とは言えず,またリポソーム製剤が顕著な効果を発揮してきたのは液剤,とくに注射剤に限定されてきた.我々はリン脂質を用い,多孔性固体粒子(Mesoporous Phospholipid Particle, MPP)を調製する技術を開発した.MPPの調製プロセスは極めて簡便であり,工業化は容易と考えられる.MPPは各種固形製剤に適用可能であるが,本稿では難水溶性薬物のための経口製剤キャリアとしての機能を紹介する.MPPは全く新しいタイプのDDSプラットホームキャリアとして,今後の発展が期待される.