2019 年 27 巻 p. 81-86
カーボンナノチューブ(CNT)などのナノ材料は生体内への取り込み過程の初期段階において蛋白質によって速やかに覆われることが知られている.このようなナノ材料表面の蛋白質の吸着層は蛋白質コロナと呼ばれており,ナノ材料の生体内動態や有害性などに影響を与える.しかし,蛋白質コロナ形成過程におけるナノ材料と蛋白質の相互作用については現時点では不明な点も多い.本研究では,CNTが表面に高密度の蛋白質吸着層を形成し,かつ,吸着した蛋白質を酸化させる作用を有することを明らかにした.この酸化機構はナノ材料の生体内動態に関する基礎知見として役立つと期待される.