2021 年 29 巻 p. 62-67
本研究は,多孔質膜を湿式プロセスで成膜する場合に,プロセスの条件と乾燥後の多孔質膜の性能の関係に関する知見を得ることを目的に実施した.比表面積が異なる二種類のカーボンブラック(XC-72rおよびLi-100)を用いて多孔質膜を作製した.プロセスの条件として,カーボンブラックを分散させるための超音波攪拌時間およびウェット膜を乾燥させるための加熱温度を変更させた.得られた多孔質膜に対して,膜厚,透過率および表面粗さに基づき多孔質構造の評価を試みた.透過率はLi-100の膜では膜厚とともに増加したのに対して,XC-72rの膜ではほぼ一定となった.表面粗さは膜厚に対して明瞭な傾向は確認できなかったものの,分散質の粒径分布がbi-modalなスラリーから成膜した膜ではカーボンブラックの種類によらず大きくなった.これらの膜厚に対する透過率および表面粗さの傾向は,カーボンブラックの形状およびスラリー中の粒径分布から説明可能であることを示した.