2023 年 31 巻 p. 140-145
石炭火力発電所からの産業副産物であるフライアッシュを用いたジオポリマーは,硬化過程において重金属を固定化する働きがあり,環境浄化分野での活用が期待される.フライアッシュの反応性が低く,硬化には長時間の加熱養生が必要なことが実用上の課題である.本研究では,フライアッシュ粒子に対して機械的処理を施して緩和な養生条件でジオポリマーを作製し,Pb2+固定化能におよぼすフライアッシュへの機械的処理の影響を検討した.機械的処理により微細化されたフライアッシュは比表面積の増大と結晶性の低下により,ジオポリマーの硬化に必要なAl3+およびSi4+イオンの溶出性が促進された.これにより,ジオポリマーが室温かつ短時間で硬化でき,室温養生であっても加熱養生と同等の高いPb2+固定化能を示した.フライアッシュ粒子への機械的処理がジオポリマーの硬化反応性だけでなく,重金属固定化能にも寄与することが示唆された.