抄録
‘あきたおにしぼり’は,在来品種‘松館しぼり’の自殖固定系統間のF1品種であるが,交配親の自殖系統と比較して葉重,根重およびT-R率といった収量特性においてヘテロシスを示す.一方,形態特性,根内部の特性および成分特性(イソチオシアネート含量,糖含量)ではヘテロシス効果は認められず,優性効果または相加効果が認められた.‘あきたおにしぼり’は,原品種‘松館しぼり’と比較して,形態特性および根内部の特性における均一性だけでなく,イソチオシアネートや糖の含量および組成といった成分特性でも均一性が高いことが確認され,‘松館しぼり’の商品化を図る上でF1化が有効であることが示唆された.他方,在来品種‘松館しぼり’は遺伝資源の多様性を内在しており,その維持保存を継続する必要がある.