抄録
ゴレンシのシュウ酸含有量の葉および果実における品種間差異および生育ステージによる違いを明らかにした.また,ゴレンシにおける主要なシュウ酸生合成経路を明らかにする目的で,グリオキシル酸酸化酵素およびアスコルビン酸酸化酵素の活性を測定した.
(1) 葉における全シュウ酸,不溶性シュウ酸および可溶性シュウ酸含有量は,酸味系品種が高い値を示し,生育ステージの進行とともに増加し,酸味系品種では可溶性シュウ酸,甘味系品種では不溶性シュウ酸含有量の全シュウ酸含有量に対する割合が特に増加した.一方,果実では,両品種とも生育ステージの進行とともに減少し,また全シュウ酸に占める可溶性シュウ酸の割合が酸味系品種で顕著に高かった.甘味系と酸味系品種を類別する食味上の要因は,全シュウ酸含有量の絶対量よりも,可溶性シュウ酸含有量の割合の高低によるものと考えられた.
(2) ゴレンシにおけるグリオキシル酸酸化酵素およびアスコルビン酸酸化酵素の活性は,いずれの品種においても確認され,葉においてグリオキシル酸酸化酵素活性が顕著に大きい値を示した.その値は黄緑色展開葉において最大を示し,酸味系品種の活性が,甘味系品種と比較し約5倍の強度を示した.一方,葉におけるアスコルビン酸酸化酵素および果実における両酸化酵素の活性はごく少量であったことから,ゴレンシにおけるシュウ酸の生合成は,主に展開葉におけるグリオキシル酸経路が機能しているものと思われた.