印度學佛教學研究
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Mahāvastuに含まれる第二の「観察経」の構造
左藤 仁宏
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2019 年 67 巻 3 号 p. 1096-1099

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抄録

説出世部に属する仏教文献Mahāvastuには,「観察経」(Skt: Avalokita Sūtra)という同名の経典が二つ含まれている.このうち第二の「観察経」が本稿の主題である.この第二の「観察経」は,降魔成道の仏伝記事を記載しながら,戒蘊の功徳や仏塔崇拝の功徳に関する説法の記述をも含んでいる.同経には,仏塔崇拝の功徳が説かれる箇所で逐語的に平行する文献が二つ存在する.先行研究は,それら二経と「観察経」は同一の源泉を有し,その源泉は仏塔崇拝の功徳を主題とした単一経典であっただろうと指摘しており,その見解は穏当なものと思われる.そしてその理解に基づけば,「観察経」に含まれている,仏塔崇拝の記述を除いた箇所,特に仏伝記事はその祖型経典に対する付加ということになる.

そこで本研究は,祖型経典から「観察経」への変容の痕跡を求めて,「観察経」の構造を示した.「観察経」をその内容から導入部分と仏伝部分と説法部分とに三分し,その仏伝部分の内容的な不整合を指摘した.そして,「観察経」はその制作過程で他の仏伝ソースからパッチワーク的に記事を流用,付加されたために,その仏伝部分に内容的な不整合を抱え込んだのだろうと結論した.さらに,仏伝記事の付加が「観察経」に内容的不整合をもたらす一方,その仏伝記事の流入と同じく祖型に対する付加と見なせる箇所(導入部分の一部と説法部分の一部)は内容的な不整合をもたらさないことに言及し,内容的な不整合をもたらす付加ともたらさない付加との対照を指摘した.

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© 2019 日本印度学仏教学会
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