医療と社会
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特集論文
介護市場における代理人問題
真野 俊樹
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2004 年 14 巻 1 号 p. 1_17-1_24

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抄録

 情報の非対称性が存在する市場では,サービスやモノなど財の提供者と需要者の立場が対等でないために,エージェンシー問題が発生する可能性がある。
 2000年4月に,介護保険が施行され,準市場の中でのサービス提供が始まった。介護サービス市場では医療サービス市場に比べれば情報の非対称性は少ないので,医療サービスに比すれば介護サービスの場合には,エージェントの必要性が低く,エージェンシー問題がおきにくい。また,現実的に考えても単独のエージェント候補は医療サービス市場と比べた場合,ケアマネジャー,保険者,医師どれも,どれかひとつを選ぶほどの卓越した適切性に乏しい。一方,財の性質上の複雑さが少ないために,情報の非対称性は一般的には少ないといえるのであるが,介護サービス受給者には高齢者が多く,痴呆等の存在のために自らの判断を下しにくいサービス需要者も多い。
 したがって,介護サービス市場においては,あるときには,ケアマネジャーもエージェント,あるときには訪問介護ステーションといった介護サービス提供機関がエージェントとなる,いわばマルチエージェントといった関係も候補として考えられる。

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© 2004 公益財団法人 医療科学研究所
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