医療と社会
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「医療経営学」序説
課題と展望
尾形 裕也
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2004 年 14 巻 3 号 p. 3_97-3_110

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抄録
 「医療経営学」は,医療サービスの需要・供給をめぐる基本的なステーク・ホルダーのマネジメントの問題を取り扱う学問分野である。医療費がGDPの8%近くに達し,その効率的・効果的な使用が強く求められている中で,こうした分野に対する社会的なニーズはきわめて大きい。しかしながら,これまでのところ,この分野における体系的かつ標準的なテキストはあまり見当たらないのが現状である。本稿においては,こうした状況を踏まえ,「医療経営学」の分析対象と方法,標準的なテキストが盛り込むべき基本的な内容等について検討している。まず,「医療経営学」の分析対象としては,医療機関及び保険者がプライオリティの高い対象であることが示される。また,分析方法としては,オーソドックスな経営学(経済学)を基本とした分析が中心となるが,あくまでも現実の日本の医療の実態や制度的前提等を十分踏まえた立論となるよう留意する必要がある。さらに,標準的なテキスト構成案が検討されている。そこでは,「組織論」と「戦略論」という経営学の基本的な構成要素を踏まえた全体の構成案が提案されている。また,これに加えて,練習問題,事例研究等を中心とした「演習」の基本的構想が検討されている。全体として,本稿は,あくまで1つの「試論」にすぎず,種々の偏向を含んでいることは避けがたい。今後,さまざまなテキスト編纂の動きが現実のものとなり,この問題に関する活発な議論が起こることが期待される。
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© 2004 公益財団法人 医療科学研究所
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