医療と社会
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研究ノート
高度医療技術の有効性の施設間格差
経皮的冠動脈インターベンションのケース
川渕 孝一杉原 茂
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2005 年 15 巻 1 号 p. 1_111-1_127

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抄録
 医療技術の進歩には目覚しいものがある。しかし,治療方法が進歩し診断精度が向上したとしても,それを現実の治療行為の場で適切に活かすことができなければ現実の医療成果の改善につながらない。こうした新技術は,臨床試験により医学的な有効性が検討されているものの,それらが実際の診療現場においてどのように医療成果の改善につながっているかについては,必ずしも明らかにされていない。そこで,本論文では,経皮的冠動脈インターベンションについて,高度医療技術が実際の治療に適応されるに当たって,病院ごとの固有の要因により現実の医療成果がどの程度左右されているかについてランダム係数モデルを使って検証した。
 ステントについては,短期的な医療成果はステントを使わない経皮的冠動脈形成術と変わらないが,長期的には再灌流療法の再施行などの重大な心血管事故の確率を低下させることが医学文献により示されている。しかし本論文の結果によれば,その効果は病院によって大きなばらつきがあり,効果的にステントを活用している病院もあれば,ステント本来の有効性を無にしてしまっている病院もあることが分かった。ロータブレーター及び血管内超音波法についても,病院固有の要因によりその有効性が左右されることが見出された。
 喫緊の課題は,最新の医療技術を導入すること自体にあるのではなく,個々の病院において,全体の治療プロセスの中で高度医療技術を医療成果の改善に結び付けるようなシステムをいかに構築するかという点であると考えられる。
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© 2005 公益財団法人 医療科学研究所
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