抄録
国内2市町村の一般人口から無作為抽出した65歳以上高齢者4,492名を対象として,日本語版EuroQol(5DおよびVAS)とIADLに関する調査を実施し,5Dの各項目から算出されるHRQOLスコアおよびVAS値に対する年齢および性別の因子効果,ならびにIADL項目との関連性を検討した。その結果,5Dの各項目において「問題あり」と回答する割合は,高齢期においても年齢とともに増加し,先行研究において十分でなかった高齢者における5Dの各項目における回答傾向を確認することができた。また,樹形モデルの解析により,HRQOLスコアおよびVAS値は,回答者の居住地域,性別,年齢等の属性による影響はみられず,IADLの項目で比較的よく推定できることが明らかになった。HRQOLスコア,VAS値および5Dのうち4項目に対して最も影響したIADL項目は「買い物」であったが,残り1項目の「身の回りの管理」に限ってはIADLの「食事の支度」であった。HRQOLスコアとVAS値は中等度に相関するが,5Dのいずれの項目についても「問題がない」とした回答者であっても,VAS値が100であった者は14%のみであり,VAS値の平均値は85.4であった。したがって,健康状態の軽微な障害は,5Dの各項目では弁別が困難であるため,5DとVAS値を併用して使用することの必要性が示唆された。