医療と社会
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消費者視点による一般用医薬品広告の役割
感情的反応と認知的反応の概念を用いて
冨田 健司
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2000 年 10 巻 2 号 p. 87-99

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抄録

製薬企業のマーケティング活動は,販売製品が医療用医薬品か一般用医薬品かで大きく異なる。一般用医薬品のマーケティング活動において大きな役割を果たすのは,マスメディアを使った広告活動である。
製薬企業の広告費の大半が一般用医薬品向けのテレビ広告であること,一般用医薬品市場は必然的な拡大傾向にあること,供給者側で一般用医薬品広告に関する意識が高まっていること,それにもかかわらずこれまでその役割や効果が明確にされてこなかったこと,という4つの理由により,本稿では消費者の視点から医薬品広告の役割について考察した。消費者がある医薬品に対してブランドを形成する際の広告の役割に着目し,この明確化を試みた。広告効果測定を含めたこれまでの消費者情報処理研究を基に,感情的反応と認知的反応の概念を用い仮説を立てた後,質問票による量的調査とグループ・インタビューによる質的調査を実施し,仮説を検証した。
その結果,次の5点が明らかになった。それは,消費者が医薬品を購買する際には広告から得たプラスの感情的反応の影響を受けること,購買経験を有する消費者の方が広告から良い感情を抱くこと,感情的反応は認知的反応の影響を受けること,医薬品広告で重視されるのは服用後の病状改善のイメージであること,消費者の関与度の相違により医薬品広告に対する意識も相違すること,である。

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