医療と社会
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高齢者医療と福祉の総合化
丸尾 直美
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1998 年 8 巻 3 号 p. 1-15

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抄録

超高齢社会を迎えて高齢者医療と介護のニーズは一層高くなる。他方,福祉の費用を支える生産年齢人口は減少し,GDPは停滞している。福祉ニーズを効率的に充足するために福祉ミックス,プロダクティブな福祉,医療と福祉の総合化などの一層の工夫が必要である。
本稿では47都道府県データのクロス・セクション分析によって,高齢者医療と介護サービスの総合化が[高齢者医療費プラス老人福祉費の合計]を節減できる可能性を計量的に示すことを試みた。まず各都道府県の病床数の介護施設の定員数に対する相対的大きさを指標化して,その指標と各都道府県の[一人当たり老人医療費あるいは入院費プラス老人福祉費の合計]との関係が正の相関関係にあることを明らかにした。
本稿では施設の関係だけの分析に限ったが,施設入所対在宅介護・看護の相対費用の比較も同様な方法で可能であろう。本稿ではあわせて1990年代にスウェーデンで導入されたエーデル改革がどのような形で高齢者医療と高齢者介護サービスを地域レベルで総合化したかを紹介して,医療施設,介護施設,在宅看護・介護の総合化に加えて,医師,看護婦,ホームヘルパーという人間関係でも連携と総合化が必要であることを示唆した。

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