抄録
単一あるいは少数分子を機能ユニットとして用いる分子デバイスは,将来のナノスケールデバイスの候補として大きな期待が寄せられている.分子デバイスの実現には有機分子1個を電極間に架橋させた際の電気特性の解明が不可欠であるが,これには幅数ナノメートルのナノギャップ電極の作製技術が求められる.本稿では,これまでに開発されている代表的なナノギャップ電極の作製法を概説し,著者らが開発した集束イオンビーム (FIB) を用いた作製法とその研究成果について紹介する.FIBによる方法では,電極のエッチング過程を電流測定によってその場観測し,電子的に停止させることでナノギャップを形成する.これより,FIBのスポットビーム径よりも幅の狭いナノギャップ電極を再現良く作製することが可能である.得られた最小のギャップ幅は3nm程度であり,本法によって幅3-6nm程度のナノギャップ電極を約90%の歩留まりで作製することが可能となった.作製したナノギャップ電極は,単一分子計測が可能な10GΩ-1TΩの高い絶縁抵抗を有する.