2018 年 57 巻 4 号 p. 403-412
商標審査とは,外観や概念などの観点から,申請商標と類似した商標が登録商標内にないかを確認する作業である.現状では,人がキーワード検索を用いて,比較する登録商標を絞り込み,目視により類似性を評価しているが,労力がかかる上に,類似商標の検索漏れが避けられないという問題がある.特に,様々な類似性の中でも外観の類似は最も基本的で多数の事例を有するため,これを対象として類似商標を自動的に検索できれば,上記問題を解決する大きな一歩となる.このとき最も意識すべき点は,検索漏れを少なくした上で,いかに非類似商標の出力を抑えるかという点にある.また同時に検索にかかる計算量も少なくしなければ,実用に適さない.本論文では,特定物体認識で用いられる画像照合の手法を導入してこの問題の解決を図る.具体的には,局所特徴を用いた画像照合,局所特徴の配置などの情報を用いた検証処理の2処理である.商標検索実験を行った結果,recall 100%,precision 62.5%,処理時間8.2秒という結果を得,商標審査官の労力を軽減できることが示された.